んき》のさとさで漁《あさ》るに速い
其の嘴《くちばし》を逸《そら》し給へ
貪婪《どんらん》な睡眠者《すゐみんじや》の樹身《じゆしん》の蟲!
温く軟《やはらか》い冬眠《とうみん》の歌
空から落ちた神話《しんわ》の巨人《きよじん》も
此の軟い歡喜を見たらうか

廻《まは》れ、廻れ、羽蟲《はむし》の群
透明な羽の香ふままに……
古い花にも似て空氣の光るのを
小歌《こうた》をあげて烟の立行くままに

  POE に獻ず ――十一月

[#天から4字下げ]Leave my loneliness unbroken!
[#地から2字上げ][#ここから横組み]“Raven”――E. A. Poe[#ここで横組み終わり]

密生林《みつせいりん》の眞白《ましろ》い閃《きら》めき
歩《あゆ》めば、歩むほど林の落葉を――
佇《たたず》みめぐる晝中《につちゆう》の思ひ……

一歩に一字の意味を探し
おち散る落葉の陰《かげ》にも瞳《ひとみ》を見出す時
晴れた十一月の空――
それにも優《まさ》る感情《かんじやう》の平明《へいめい》をおもふ

あはれこの詩は此處にも抱かれ
眞面目《まじめ》に色|褪《さ》めた墓原《は
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