。)花を持って参りましたの。そしてあの柑子も。
画家。(詞急に。)うむ。好い好い。(立ち上り、歩み寄る。)翁草を買って来たね。お前はその花が好きかい。
モデル。(驚く。)これではいけなかったのですか。
画家。好いとも。(花を二三本取りて、娘の髪に当てがい見る。)お前のブロンドな髪に映りが好いぜ。
モデル。(さっぱりと)そのお嬢さんがわたしの髪とおんなじならようございますが。
画家。(驚きたる顔にて相手を見、さて。)ああ、その事かい。(間。)そんな事はもう忘れていた。己はただこの花を花輪にして、お前の髪に載せたらどんな工合だろうかと思ったのだ。
モデル。(花をいじりつつ。)そうしてかいて見ようと思いなすったの。
画家。まあ、そう思ったとしてな。お前にその花輪を戴《いただ》かせて見た処が、ひどく映りが好かったのだ。そこでかこうと思ったが。
モデル。え。
画家。かこうと思ったが、その時丁度かく気になれなかったとしよう。頭痛か何かするのだな。そうしたらお前はどうするい。
モデル。待っていますわ。
画家。その内に日が暮れてしまって、かけなくなったらどうするい。
モデル。そんならそのあしたまで待ち
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