路上
梶井基次郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)卯《う》の花
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)心|惹《ひ》かれる
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うつぎ[#「うつぎ」に傍点]
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自分がその道を見つけたのは卯《う》の花の咲く時分であった。
Eの停留所からでも帰ることができる。しかもM停留所からの距離とさして違わないという発見は大層自分を喜ばせた。変化を喜ぶ心と、も一つは友人の許《もと》へ行くのにMからだと大変大廻りになる電車が、Eからだと比較にならないほど近かったからだった。ある日の帰途気まぐれに自分はEで電車を降り、あらましの見当と思う方角へ歩いて見た。しばらく歩いているうちに、なんだか知っているような道へ出て来たわいと思った。気がついてみると、それはいつも自分がMの停留所へ歩いてゆく道へつながって行くところなのであった。小心翼々と言ったようなその瞬間までの自分の歩き振りが非道《ひど》く滑稽に思えた。そして自分は三度に二度というふうにその道を通るようになった。
Mも終点であったがこのEも終点
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