である。その僕からかの平明な坦懷な淺見君の作風に接するとき、僕に起る氣持が、心憎さと同時にある種の齒痒ゆさであることは、淺見君にも了解して貰へることだらうと思ふ。もつと冒險をして下さい。僕が淺見君に抱いてゐる今云ひ度いことはそれだけだ。――そしてこの氣持は最近文藝都市に出た短篇「三人」が僕に刺衝した作者への要求である。
 淺見君の作品に就いてはもつと詳しい、種々僕自身としての回顧や感想がある。しかしそれはいづれ他日期を見て筆をとり度く思ふ。
[#地から1字上げ](昭和三年七月)



底本:「梶井基次郎全集 第一卷」筑摩書房
   1999(平成11)年11月10日初版第1刷発行
初出:「文藝都市」
   1928(昭和3)年7月号
入力:土屋隆
校正:高柳典子
2005年5月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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