淺見淵君に就いて
梶井基次郎

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 私は淺見君にはまだ數へる程しか會つたことのない間柄である。隨つて淺見君に就いては知ることが非常に尠い。尤も淺見君の弟である淺見篤(舊眞晝同人)とは高等學校のとき非常に親しかつた。淺見君に會つたそもそものはじめも彼を介してである。
 最初にたしか紅屋の二階であつたと思ふが會つたときは、それが淺見兄弟の共通したフイジイオグノミイである、ちよつと西洋人臭い感じがした。そしてボオドレエルのあるポートレイトにどこか似てゐるやうに思つた。少し吃音癖のある控へ目な話し振りは淺見君の奧床しい人柄を想像させた。そしてこのときの印象は今に於ても少しも變つてゐない。このときはたしか僕達のやつてゐた「青空」が出たか出かけのときで、隨分以前の話である。
 二度目はたしか池袋の方の田舍の新居へこれも弟の篤君と、訪ねたときである。このときは淺見君達は既に同人雜誌「朝」から「文藝城」をやつてゐた。そして種々同人雜誌の話をしたことを覺えてゐる。尾崎一雄君
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