青空同人印象記(大正十五年六月號)
『青空』記事
梶井基次郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)能筆《シエーンシユライバー》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|道理で《ナチユールリツヒ》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)どし/\
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忽那に就て
忽那はクツナと讀む。奇妙な名だ。こんな話がある。高等學校では彼も教場を下駄穿きで歩く方だつた。獨逸人の教師が、
「何故下駄で教室へ入るのだ」と或日彼に云つた。
「靴がないのです」
そこでヘルフリツチユ先生が
「|道理で《ナチユールリツヒ》クツナ」
忽那の生國は伊豫だ。彼は犬神の話を持つてゐる。鬪鷄の話。海上の婚禮の話。おこぜの話。――そんなところから郷土的な「肥料盜人」のやうなものが生れた。
高等學校ではラグビーをやつてゐたことがある。應援團の中にもゐた。それでゐて畫をやる。かなり多方面だ。高等學校でも大學でも獨逸人には「能筆《シエーンシユライバー》」と云はれる。
情に脆く人なつこい性質とその半面の孤獨――時として彼はまいまいつ
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