ぶらの樣に蓋を閉ぢてしまふ。
私は彼の印象から龍を畫くことが出來さうだ。然し睛を點じることは忽那よ、それは私一人ではやれないことだ、友情を力にして、二人で睛を點じようではないか。
飯島に就て
寄宿舍の受付には外國からの映畫雜誌が飯島宛に澤山來る。古顏の生徒が勝手に開封して「シヤンだな」など云つて頁をまくる。飯島はそれを一番嫌つた。活動から歸つて來ると、「義侠のらつふるず」といふ風にノートへ役割からシナリオから何から何まで書き入れる、――そんな熱心さだつた。佛文科へ入ることは一等最初から極めてゐた。同室だつた自分は隨分影響をうけた。それが京都で三年、私が遲れて東京へ來てからも、まだ續いてゐた。そして飯島の名は人々の知るところとなつてゐた。小方又星、伊吹武彦、淺野晃、そんな人々と新思潮に據り戲曲をどし/\發表し出した。その人が病氣になつた。確か一昨年の冬だつたと思ふ。それから此方まだ快くならない。
飯島ははつきりした人だ。たくらまない表現がそれを語つてゐるやうに、正直な淡白な人だ。そのなかに自からの含蓄を持つてゐる。
詩を作るやうになつたのはやはり病氣になる前後だつた
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