も馬鹿氣たところはない。私は作者のかういふ風な書き方に同感を持つ者だ。八木氏等の出してゐる麒麟といふ同人雜誌は最近寄贈をうけてゐたが、自分は讀まなかつたが、この小説のやうに外見はあまり引立たない。然し内容は――とこの小説の讀後の感じはそんなところへまで變に實感を持たせるのである。
晴れた富士 (崎山猷逸氏)
この作品はこの作者の平常のものよりも惡いやうに思はれる。私は感心出來なかつた。「二」の馬車のなかで姉の肩が曉の腕に觸れて、そんなことも淋しく思ふ。――あのあたりのやうな眞實さがこの作品の重要なところに缺けてゐると思ふ。
姉の死と彼 (中山信一郎氏)
依怙地なやうな變に感じのある作家である。然しそれもこの作品に於ては完成から非常に遠いと思はれる。
桃色の象牙の塔 (久野豐彦氏)
これの批評は差控へる。
結婚の花 (藤澤桓夫氏)
この作家の從來の作品に於て、これまで私にネガテイヴな價値しか持つてゐなかつたものは、この作品によつてポヂテイヴなものに改められた。それはこの「三」に於けるが如き立派な完成を見たからである。實感を伴
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