『青空』のことなど
梶井基次郎
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文藝部から嶽水會雜誌の第百號記念號へ載せる原稿をと請はれたが、病中でまとまつたものへ筆を起す氣力もなく、とりとめもない「青空」のことなどで私に課せられた責を塞ぐことにする。
「青空」といふ雜誌は大正十四年の一月から昭和二年の央まで發行されてゐた。僕達三高卒業生の據つてゐた同人雜誌であつた。皆が三高を出てから東京へ行つて出したので、それの追憶と云へば舞臺は東京になる譯であるが、私はそれの培はれた三高時代の思ひ出にこの話を限り度い。三高時代私達は劇研究會といふものを持つてゐた。これが青空の前身であつた。それは劇の方では本讀み、演出などをやつてゐたが、そこには名目通りの劇研究があつたといふよりも、寧ろ廣汎な文藝に對する私達の飽くなきアスピレイシヨンが團結してゐたのであつた。劇作は思ひ出して見ても、外村
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