豊竹呂昇
長谷川時雨
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)今朝《けさ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)補助|椅子《いす》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ごうごう[#「ごうごう」に傍点]
−−
私は今朝《けさ》の目覚めに戸の透間《すきま》からさす朝の光りを眺めて、早く鶯《うぐいす》が夢をゆすりに訪れて来てくれるようになればよいと春暁の心地よさを思った。如月《きさらぎ》は名ばかりで霜柱は心まで氷らせるように土をもちあげ、軒端《のきば》に釣った栗山桶《くりやまおけ》からは冷たそうな氷柱《つらら》がさがっている。崖《がけ》の篠笹《しのざさ》にからむ草の赤い実をあさりながら小禽《ことり》は囀《さえず》っている。
寒明けの日和《ひより》はおだやかで、老人たちが恋しがるばかりではない日の光りはのどかだ。
(ほんとに早く鶯の声を聴くようになるといいな)
あの寝ざめの、麗音をなつかしみながら私は呟《つぶ》やいた。町中に生れ育った私は、籠《かご》に飼われない小禽が、障子のそとへ親しんで来てきかせてくれる唄声《うたごえ
次へ
全17ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング