別府《べっぷ》には※[#「火+華」、第3水準1−87−62]《あき》さまの御別荘がおありですから、それはよろしう御座いますの。随分前から御一緒に行くお約束になっていて、やっと参りましたのよ。伊藤さんがお迎えながらいらっしゃるはずでしたところ、風邪《かぜ》をおひきになったって電報が来たものですから、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]さまは急いでお帰りになりましたの。だから残念でしたわ。」
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 語る人のあでやかな笑顔《えがお》。それよりも前に、わたしはかなり重く信用してよい人から、こういうふうにも聞いていた。
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白蓮さんは伝右衛門氏のことを、此方《このかた》が、此方がといわれるので、何となく御主人へ対して気の毒な気がして返事がしにくかった。それに、あの人の歌は、どこまでが芸術で、どこまでが生活なのか――あの生活が嫌《いや》なのだとはどうしても思われない。
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 手紙のことといい、武子さんの話の断片といい、この歌の評といい、突然なので、知らない読者には解しかねるであろうが、この間には、例の白蓮女史|失踪《しっそう》事
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