真に、白蓮※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子は身の置きどころもない観だった。

 だが、ああいった武子さんは、自分で綿入れを縫って隠れ家へ届けている。
 わたしが訪ねたのは、もう写真班の攻撃もなくなった、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子さんの廻りも、やっと落附いてきた時分だった。山本安夫と表札は男名でも、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子さんと台所に女の人がいただけだった。ふと、痩《や》せた女《ひと》の、帯のまわりのふくよかなのが目についた。そのことを、どこの何にも書いてなかったのは、気がつかなかったのかも知れないが、煩《うる》ささが倍加しなくてよかったと、わたしは心で悦んでいた。晒《さら》し餡《あん》で、台所の婦人《ひと》がこしらえてくれたお汁粉《しるこ》の、赤いお椀《わん》の蓋《ふた》をとりながら、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子さんが薄いお汁粉を掻《か》き廻している箸《はし》の手を見ると、新聞の鉄箒欄の人は、自分を崇拝している年下の男の方が、我儘が出来るのは当然だがといったが、どんなところから割出したものかと思った。昨日《きのう》まで
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