いりょう》すぎて、露骨なほど明かに書いておいたから、いま質問を受けるのを遺憾と思う。
――今度の行動には多くの欠点手落ちがあった。絶縁状が相手に落ちないうちに発表され、自分が独立しないで多くの人に依頼したこと、自ら妾《しょう》を夫に与えていた事、非難の点多し。これは外面的な、従属的なことである。
――今度のようなことは、男でも女でもちょっと思いきって決行出来ないのが普通だ。それを断行した事によって、このインフェルノから救われたのは、独り『踏絵』の女詩人ばかりではなく、伝右衛門氏にとってもまた幸福であったことを考えねばならぬ。(概略)
[#ここで字下げ終わり]

 白蓮さんの方で、着物も指輪も手紙をつけて送りかえしたといえば、伝右衛門氏の側では、絶縁状は未開封のまま突きもどすといい、正式に離婚をするといっている。各々の立場が違って、宮崎氏の方は、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子さんの環境から見ても、どこまでもああした、自覚的態度を強調させようとし、事件が大袈裟《おおげさ》になることは、もとより覚悟の上であったろうが、絶縁状の字句が、何やらん書生流で、ほんとに、心《しん》から底
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