世界はちがっていても、謙遜《けんそん》しあうのが夫婦の道、だが絶縁状を見たうえは、何とか処置する。
勿論、今朝《けさ》の(廿二日)新聞で事情の大略は知ったが、しかし、そんな事が実際あるべきものとは思われない。※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子としても、そんな無分別なことを果してしたものだろうか、本月末には博多《はかた》に帰って来る約束をしてある。家庭のことを振りかえって見ても、不愉快や、不満に思うふし[#「ふし」に傍点]は毛頭《もうとう》あるはずがないと思います。随分|我儘《わがまま》な女です。何不自由なく、世間《せけん》から天才とか何とかいわれるまで勉強もさせ、小遣《こづかい》だって月五十円はおろか一万円にものぼることすらある。あの女を、伊藤なればこそ養っているなどと噂《うわさ》もある。
それは柳原さんや、入江《いりえ》さんも知っている。
私は田舎者の無教育ですから、※[#「火+華」、第3水準1−87−62]子が住んでいる文学の世界などは毛頭知りません。だからその点遠慮して、どんな事をしようが、何一ツ小言《こごと》をいった事はありません。
[#ここで字下げ終わり]
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