げ]
当世貌《とうせいがお》は少しく丸く、色は薄模様にして、面道具《めんどうぐ》の四つ不足なく揃へて、目は細きを好まず、眉《まゆ》厚く鼻の間せわしからずして次第に高く、口小さく、歯並《はなみ》あら/\として白く、耳長みあつて縁浅く、身を離れて根まで見えすき、額《ひたい》ぎはわざとならず自然に生えとまり、首筋たちのびて、後《おく》れなしの後髪、手の指はたよわく、長みあつて爪《つめ》薄く、足は八|文《もん》三|分《ぶ》の定め、親指|反《そ》つて裏すきて、胸間常の人より長く、腰しまりて肉置《ししおき》たくましからず、尻はゆたかに、物ごし衣装つきよく、姿の位そなはり、心立《こころだて》おとなしく、女に定まりし芸すぐれて万《よろず》に賤《いや》しからず、身にほくろひとつもなき――
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と井原西鶴《さいかく》はその著『一代女』で所望している。
明治期の美女は感じからいって、西鶴の注文よりはずっと粗《あら》っぽくザラになった(身にほくろ一つもなき)というに反して、西洋風に額にほくろを描くものさえ出来た。
徳川期では、吉原《よしわら》や島原《しまばら》の廓《くるわ》が社交場で
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