つおん》のうちに聴くことを得意とする。女性の胸に燃えつつある自由思想は、(化粧)(服装)(装身)という方面の伝統を蹴り去り、外形的に(破壊)と(解放)とを宣告し、ととのわない複雑、出来そくなった変化、メチャメチャな混乱、――いかにも時代にふさわしい異色を示している――と語っている。
その時代精神の中枢は自由であった。束縛は敵であり、跳躍は味方だった。各自の気分によって女性はおつくりをしだした。美の形式はあらゆる種類のものが認識され、その奔放な心持ちは、ゆきつくところを知らずにいまもなお混沌《こんとん》としてつづいている。
この混沌たる時代粧よ。
改革の第一歩は勇気に根ざす、いかに馴化《じゅんか》された美でも、古くなり気が抜けては、生気に充《み》ちた時代の気分とは合わなくなってしまう。混沌たる中から新様式の美は発しる。やがて、そこから、新日本の女性美は現わされ示されるであろう。
古《いにしえ》から美女は京都を主な生産地としていたが、このごろ年ごとに彼地へ行って見るが、美人には一人も逢《あ》わなかったといってよいほどであった。一世紀前位までは、たしかに、平安朝美女の名残りをとどめ
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