れるほどのものには、各階級を支配し、代表した美がある。尤《もっと》も現代の理想は、差別を廃し、平等となる精神にある。とはいえ、根本は一つでありながら、美と善とは両立せねばならぬ。そして生れながらにして、美を心に、姿に授けられたものは、砂礫《されき》のなかのダイヤモンド、生《いき》るにけわしき世の、命の源泉として、人生を幸福にするものといえる。
 かつて、「現代女性の美の特質」とて、大正美人を記《しる》した中に、あまりに世の中の美人観が変ったとて、「現代は驚異である」とわたしは言っている。現代では、度外《どはず》れということや、突飛《とっぴ》ということが辞典から取消されて、どんなこともあたりまえのこととなってしまった、実に「驚異」横行の時代であり、爆発の時代である。各自の心のうちには空さえも飛び得るという自信をもちもする。まして最近、檻《おり》を蹴破《けやぶ》り、桎梏《しっこく》をかなぐりすてた女性は、当然ある昂《たかぶ》りを胸に抱《いだ》く、それゆえ、古い意味の(調和)古い意味の(諧音《かいおん》)それらの一切は考えなくともよしとし、(不調和)のうちに調和を示し、音楽を夾雑音《きょうざ
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