う妻を理想として矛盾を感じない男もあります。
 近代生活思潮に刺戟《しげき》をうけながらも、その不安をごまかして、与えられる物質だけに満足して、倦《もの》うい日々をおくるのを、高等な生活のように思いこんだ婦人たちは、あなたが新しい女と目されて、社会の耳目を※[#「奇+支」、第4水準2−13−65]《そば》だたせたおりに――無気力無抵抗につくりあげられた因習の殻《から》を切り裂いて、多くの女性を桎梏《しっこく》の檻《おり》から引出そうとしたけなげなあなたを、男が悪口する以上な憎悪《ぞうお》の目をもって眺めさげすみました。知識階級にある男たちまでが好《い》い気になってあなたの恋愛――他人に何らの容喙《ようかい》をも許されないことにまで立入って、はずかしげもなくあげつらい得々《とくとく》としていました。しかしそれは日本人の癖で、ちょっと他の者が答えかねる事を――賤《いや》しさを、口にするのが、妙な風に感心させようとする手段で、他をはずかしめると共に自らを低くする事に平気なのです。無神経なのです。それをまた得々として雷同するものが多いのは情《なさけ》ないことです。
 あなたはそうした意味であら
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