に傍点]もどきで錦子は、満足した自分の体も、そこへ、その通りの姿態《ポーズ》で肘《ひじ》を枕にして、ころがった。
――小説にしようか、絵の修業をしようか――まとまりようのない空想が、あとからあとから湧《わ》いてくる。つい、うっとりとしていると、
「あら、これ、何なの?」
妹がその絵を、見ているのは好いが、その後から母も来る様子なのに、錦子は慌《あわ》てた。
「その、小説の口絵を、真似《まね》たのよ。」
そう言って妹はごまかせても、母親の眼は恐《こわ》い。絵の具が乾《かわ》かないで、生々して見えるその尻の恰好《かっこう》は、娘の尻の肉つきそのままであることを母親は、一目で見破るであろう。乳首の出ぬ丸いさしぢちは?
――おお、まあ、なんてこの娘は、いやな――
と、呆《あき》れて、眼を反《そ》むけながら角立《つのだ》てるに違いはない。
いつも、いつも、お前はなんて早熟《ませ》ているのだろうと呟《つぶや》く母親には、見られたくなかったので、錦子は跳《はね》おきると、乳房《おちち》は朝※[#「白/八」、第3水準1−14−51]《あさがお》にしてしまい、腰の丸味は盥《たらい》にしてしまっ
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