かり仲間になつてやつてしまふとな、佛を持つて來たのだらう、すると皆《みんな》が妙だ。妙だ、變な匂ひがするつて、ヘツ、する筈だあな、線香で鰯の匂ひを消さうと思やがつて、和尚《おしやう》が燻《いぶ》したてるんだ、たまらねえ。
呆れてしまふな、何宗だい。
何宗だか、俺《おれ》ンの家《とこ》の寺ぢやねえもの知らねえや。
親鸞樣《しんらんさま》は矢ツ張り豪《えら》いな。
さうともよ、末世《まつせ》を見通しなされたのだ、あれほどのお方で妻帶をなすつたのは、御自分の豪《えら》いのを知つて、後《のち》の坊主どもが、とてもそんな堅つくるしくしてゐられめえと、わざと御自分がみんなの爲に、ああなすつたのだとよ、豪《えれ》いな、眼があるのだ、有難い話ぢやねえか。
あしたの紅顏《こうがん》夕《ゆふ》べに白骨《はつこつ》となる、ほんとだ、まつたくだ、南無阿彌陀佛と言ひたくならあな。
お前の家は何宗だつけな。
本願寺だ。
――當りますよ、大當り、と船頭は聲を張あげた。
雨の日に、年をとつた勞働者が二三人、寒さうに顫へながら、小さな聲でこんな咄《はな》しをしてゐた。
金華山て何處だらう。
さう
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