大塚楠緒子
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)二昔《ふたむかし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)日本橋|倶楽部《くらぶ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あらい[#「あらい」に傍点]絣《がすり》
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 もうやがて二昔《ふたむかし》に近いまえのことでした。わたしは竹柏園《ちくはくえん》の御弟子《おでし》の一人《ひとり》に、ほんの数えられるばかりに、和歌をまなぶというよりは、『万葉集』『湖月抄』の御講義を聴講にいっておりました。すくなくても十人、多いときは二、三十人の人たちが、みんな熱心に書籍の中へ書入れたり、手帖《ノート》へうつされたりしていました。男子も交る時もありましたが、集りは多く女子《おんな》ばかりで、それも年若い美しい方たちが重《おも》でした。
 美しい方たちの寄合うなかでも、何時《いつ》までも忘れぬ印象をとめているという方は、さてすくないものと、今更に淋《さび》しい思出のなかに、くっきりと鮮かに初対面の姿の目に残っているのは、大塚楠緒子《おおつかなおこ》女史の面影《おもかげ》でし
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