た。
やや面長《おもなが》なお顔だち、ぱっちりと見張った張りのある一重瞼《ひとえまぶち》。涼しいのも、爽《さわや》かなのも、凛《りん》としておいでなのもお目ばかりではありませんでした。明晰《めいせき》な声音《こわね》やものいいにも御気質があらわれていたのでしょうと思います。思うこともなげな、才のある若い美しい方の頬《ほお》の色、生々《いきいき》として、はっきりと先生におはなしをなさってでした。濃い髪《おぐし》を前髪を大きめにとって、桃割れには四分ばかりの白のリボンを膝折り結びにかたく結んでかけてお出《いで》でした。二尺の袖《そで》かと思うほどの長い袖に、淡紅色《ときいろ》の袖を重ねた右の袂《たもと》を膝の上にのせて、左の手で振りをしごきながら、目を先生の方を正しくむいてすこし笑ったりなさいました。
帯は高く結んでお出《いで》でしたが、どんな色合であったか覚えておりません。忘れたのか、それともその時は、ずっと襖《ふすま》の側に並んで座《すわ》っていましたから、其処《そこ》から見えなかったのかも知れません。召物《めしもの》は白い上布《かたびら》であらい[#「あらい」に傍点]絣《がすり》
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