あったという事でした。そういう悲しい思出は数ある楽しかったことよりも深く、博士が腕に抱《かか》えて帰京なされた、遺骨の重味《おもみ》と共に終世お忘れにならないことでしょう。雑司《ぞうし》が谷《や》の御墓《おはか》の傍《かたわら》には、和歌《うた》の友垣《ともがき》が植えた、八重《やえ》山茶花《さざんか》の珍らしいほど大輪《たいりん》の美事《みごと》な白い花が秋から冬にかけて咲きます。山茶花はすこし幽《ゆう》にさびしすぎますが、白の大輪で八重なのが、ありしお姿をしのばせるかとも思います。
底本:「新編 近代美人伝(下)」岩波文庫、岩波書店
1985(昭和60)年12月16日第1刷発行
1993(平成5)年8月18日第4刷発行
底本の親本:「婦人画報」
1915(大正4)年10月
初出:「婦人画報」
1915(大正4)年10月
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2007年4月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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