大川ばた
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)下總野《しもふさの》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大名|下邸《しもやしき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いう/\と
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大川は、東京下町を兩斷して、まつすぐに流れてゐる。
その古の相貌は、まことに美しい潮入り川で、蘆荻ところどころ、むさしの側は、丘は鬱蒼として、下總野《しもふさの》の、かつしかあがたは、雲手《くもで》の水に水郷となり、牛島の御牧《みまき》には牛馬が放牧されてゐた。北には筑波が朝紫に、西に富士はくれなゐの夕照《ゆふばえ》にくつきりと白く、東南に安房上總は青黛のやうに、海となる空のはてに淡い。
このころこそ全くの隅田川で、
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名にしおはばいざこと問はん都鳥我思ふ人はありやなしやと。
[#ここで字下げ終わり]
と、東下りの業平さんに涙させた――もつとも、その古跡は、埼玉の古利根川だともいふが――白き鳥の、
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