人魂火
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)私《あたくし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二人|世帯《じょたい》
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これは私《あたくし》の父が、幼いころの気味の悪《わ》るかったことという、談話《はなし》のおりにききましたことです。場処は通油町《とおりあぶらちょう》でした。祖母が目をかけてやっていた、母子《おやこ》二人|世帯《じょたい》の者が、祖母の家《うち》の塀外《へいそと》に住んでいた、その息子の方《ほう》のことです。母親という人は後家で通して来たので、名代《なだい》の気丈なものだったそうですが、ある夜、もうかれこれ更《ふ》けて、夏の夜でしたが、涼み台もしまおうという時分に、その後家の家《うち》の軒前《のきさき》へ人魂《ひとだま》がたしかに見えたと、近所の者が騒ぎだしたのです。私の父も見たともうしました。するとその母親が、息子が留守だと思って馬鹿にすると、大変|家《うち》のなかから怒ったそうで御座《ござ》いました。それでその折は過《すぎ》てしまったのでしたが、翌朝になると祖母の処《ところ》へ、その母親が顔色をかえて
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