煎藥
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)苦《にが》い

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十月|一日《ついたち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\
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 腸を拂ふと欝血散じ、手足も暖まり頭輕く、肩張りなんぞ飛んでゆくと、三上の友人が漢方醫を同道されて、藥効神のごとしといふ煎藥をすすめてゆかれたので、わたしはそれを一服、ちよつと失禮して見た。
 煎藥を、苦《にが》い顏をして飮み下したわたしは、あれとこれと、今日から明日中にしてしまふ仕事のはかどりを考へてニコついてゐた。頭をはつきりさせておかないことには、卅一日あると思つてゐたのが三十日ぎりで、しかも廿九日だと數へちがひをしてゐた日が三十日といふわけで、二日間のとりかへしをつける氣がまへなのだ。藥は、昨日の朝半服分、夜寢しなに殘り半服、今朝また半服飮んで、さあ來い來たれとばかり、心身すがすがしくなるのを待つてゐると、お晝過ぎから夢心地のやうな水
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