長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)觸《さ》はつて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](「生活と趣味」昭和十年七月八日)

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)しみ/″\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 趣味とは、眺めてゐるものと、觸《さ》はつて見るもの、觸《ふ》れなければ堪能できないものと、心に養つてゐるものとがある。それを大《おほ》づかみに一括して「趣味」といふのだらうが、自分に出來ないことを羨ましがるのも、いい意味での趣味だ。それは羨望には、ものねたみをふくむ憂ひはあるが、こんなのは甚だ罪が淺い――
 といふのは、私には水泳《およぎ》が出來ないのだ。これは水ぎらひとか、恐怖とかいふのから出來ないのではなくて、生れた土地的のものからと、體質《からだ》からとで、水練の機會がなかつたからだが、これは、一生を通じて損をした大きなものだと思ふ。
 場處により、土地によると、別に財物がなくても修練の出來る業《わざ》であり、また健康でさへあればほんの僅
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