住居
長谷川時雨

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)二間《ふたま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]――昭和十四年五月號・朗――

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
−−

 松岡映丘畫伯の晩年の作によく見えた丘の段々畑。あの新大和繪風な色彩そつくりの山畑を遠くから見て、絣のやうなと形容したのを、笑はれたことがあるが、郊外などの、田園都市の近代風の建物の遠景などは、更紗模樣とも眺められる。
 ところで、わたくしの家の好みは、どこかばかげた、間の拔けたところが、一二個所ある建てかたが好きだ。それを利用して生かす面白味が、他人の家にはない、自分のところでなければないといふ、樂しさと親しさで、愛の籠るものだと思つてゐる。
 しかしこのごろの小住宅の建てかたは、ゆるみのない、きつちりした、無駄なしの間どりださうだが、さうなると、棚の釣りかたにいろ/\工合が出來て、天井と鴨居との空間に、何か試ろめさうな氣がする。
 つい最近、新しく購入れた人の家を二軒見せて貰つたが、家の間どり
次へ
全3ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング