だねである。
 二人の男の子をもつ妹は、海軍軍人に縁づいて、早くから未亡人になつてゐたが、上の方の子は少年の時から、船のおもちやばかり造つてゐて、帝大工科在學中に機關中尉になり、今時局に、幾分の御奉公をいたすのに間にあつた。下の方の子は南洋へいつて、南洋開拓の些少の土持ちをしてゐる。
 その次の妹は、獨り娘にもらつた養子が豫備少尉で、事變應召に勇んで出たのをはじめにして、つい兩三日前、すぐ下の妹の息子と、わたくしが預かつて、赤ん坊の時から育ててゐた、弟の子が、おなじ隊へはいつた。
 これもつい先日、大尉に昇進した海軍の方のは別として、陸軍の兵隊に出た三人のうち、二人は帝大出、手許のが早大出だが、おなじ隊へはいつた二人と、南洋へいつてゐるのとが同年、氣質は異つてゐるが、仲が好い。
 最近入隊した方の甥の一人は、おとなしい男で、教育學を專攻にして、コツコツとやつてゐたが、兵隊になる感想をきくと、インテリは大衆から浮いてゐるから、僕はみんなとほんとに一緒になれることを、よろこんでゐますといつた。
 この子が少年のころ、親たちが北京に居たので、私の手許にも居たことがあるので、人混みの中などでは
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