しドッシリした調子の一幅《いっぷく》の北欧風の名画があったともいえようし、立派な芝居の一場面が展開されるところともいえもしよう形容を、と見るその室内は有《も》っていた。
 欣々夫人の座臥《ざが》居住の派手さを、婦人雑誌の口絵で新聞で、三日にあかず見聞《みきき》しているわたしたちでも、やや、その仰々しい姿態《ポーズ》に足を止《とど》めた。
 客間《へや》の装飾は、日本、支那、西洋と、とりあつめて、しかも破綻《はたん》のない、好みであった、室の隅《すみ》には、時代の好《よ》い紫檀《したん》の四尺もあろうかと思われる高脚《たかあし》の卓《だい》に、木蓮《もくれん》、木瓜《ぼけ》、椿《つばき》、福寿草などの唐《から》めいた盛花《もりばな》が、枝も豊かに飾られてあった。大きなテーブルなどはおかないで、欣々女史はストーブに近くなかば入口の方へと身をひらいて、腕凭椅子《うでかけいす》のゆったりしたのにゆったりと凭《よ》りかかっていた。
 彼女は、驚嘆したであろう客の、四《よ》つぶの眼の玉を充分に引きよせておいて、やおら身じろぎをした。立上って、挨拶《あいさつ》をしようとするのだ。
 それまでに、わた
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