、美しき姫の御縁談御縁談と、ところどころに書いてあるが、武子姫の御縁談のことを、重だってお考えになる方は、お姉君の籌子《かずこ》夫人が、その任に当られるようになりましたとある。本願寺重職の人々が、それぞれ控えていまして、その人々の意見もあり、籌子夫人お一方のお考えどおりには、捗行《はかゆ》かぬ煩らわしい関係になっているのでした、ともある。
その一節を引くと、
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二十の春を迎え給《たま》いし姫君、まして、世の人々が讃美の思いを集めています武子姫の御縁談につきまして、本願寺の人々が、今は真剣に考慮するようになりました。
「たあさまは、二十にお成りあそばしたのだから」
「しかし、それについて、御法主《ごほっす》は何とも仰せがないから[#「何とも仰せがないから」に傍点]、まことに困る。」
「我れ我れから伺ってみようではないか」
と、室内部長とか、執行部長とか、本願寺内閣の要職にある人々が、鏡如様(光瑞師)の御意見を、伺い出ますと、
「お前たちが選考して好《よろ》しい。己《おれ》には今、これという心当りがない」と、一任するという意味でした。(註『九条武子夫人』、一四九頁)
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