美しい恋のまことが、やがてきっと、大きな御手《みて》にみちびかれてゆきまする。
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昭和三年一月十六日より歯痛、発熱は暮よりあった。十七日、磯辺病院へ入院、気管支炎も扁桃腺《へんとうせん》炎も回復したが、歯を抜いたあとの出血が止まらず、敗血症になって、人々の輸血も甲斐《かい》なく、二月七日朝絶息、重態のうちにも『歎異鈔《たんにしょう》』を読みて、
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有碍《うげ》の相《そう》かなしくもあるか何を求め何を失ひ歎《なげ》くかわれの
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この人に寿《ことほぎ》あって、今すこし生きぬいたらば、自分から脱皮し、因襲をかなぐりすてて、大きな体得を、苦悩の解脱《げだつ》を、現《あき》らかに語ったかもしれないだろうに――
[#地から2字上げ]――昭和十年九月――
底本:「新編 近代美人伝(下)」岩波文庫、岩波書店
1985(昭和60)年12月16日第1刷発行
1993(平成5)年8月18日第4刷発行
底本の親本:「近代美人伝」サイレン社
1936(昭和11)年2月発行
初出:「近代美人伝」サイレン社
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