に痛切に響いてくる。
 私は一連枝にすぎないからと、一応辞退したというその人にも先見の明がある。私はその名もきいたが――
「世間的の地位なく」と断わるのは、若い人にむかって無理だと誰しもおもおう。それは、東の法主の後嗣者でもないのにという意味にとればわかる。だが、「才腕なき普通の連枝」とは、失礼なことを言ったものだ。この人、先ごろからの、東本願寺問題に、才腕ある連枝だとの評が高い。
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かりそめの 別れと聞きておとなしう うなづきし子は若かりしかな
三夜荘《さんやそう》 父がいましし春の日は花もわが身も幸《さち》おほかりし
緋《ひ》の房《ふさ》の襖《ふすま》はかたく閉ざされて今日も寂しく物おもへとや
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]――『金鈴《きんれい》』より――

       二

 東西本願寺の由来は、七百年前、親鸞聖人の娘、弥女《いやにょ》が再婚し、夫から譲られた土地に、父親鸞上人の廟所《びょうしょ》をつくったのにはじまる。この弥女は覚信尼《かくしんに》といい、この人の孫が第三世|覚如《かくにょ》。親鸞の子|善鸞《ぜんらん》から、如信《にょしん
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