職の人々にしてみますと、法主の妹君として、まして世に稀《ま》れなる才能と、比《たぐ》いなき麗貌《れいぼう》の武子姫が、世間的に地位なく才腕なき普通の連枝へ、御縁づきになる事は、法主鏡如様の権威に関《かか》わり、なお自分たち一同の私情よりしても、堪えられないことに思われるのでした。――
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おお! まあ、そんなことで否決して、会議は幾度も繰りかえされたのだ。
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「明如《みょうにょ》様(光尊師)が御在世ならば、御一存ですぐ決まるのだけれど……」
「――たあさまが家格の低い所へ御縁づきというのでは、我れ我れが申訳《もうしわ》けないことになる。」
「それは無論、御在世ならば、先方の人物本位にと仰せられるに相違はない。」
「いや、しかし、子爵以下では、何とも当家の権威に係《かかわ》る」――(『古林の新芽』、一五二頁)
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おお! まあ、なんと、そんなことで、華族名鑑をもってきても、選考難に苦しんだとは――
ここで、前記の、
「お前たちが選考してよろしい、己には今、これという心当りがない。」
という光瑞師のいったことが、まこと
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