一様にさせることで、妹弟《きょうだい》の世話、床のあげさげが、次の妹へと順送りになると、煙草盆掃除から、客座敷の道具類の清ぶきになる間までに、庭掃除から、玄関掃除、門口に箒目を立てて往来の道路まで掃くこと、打ち水をすること、塀や門をあらったり拭いたりすること、敷石を水で洗いあげることを、手早く丁寧に助けあって励んでやらなければならない。それは夏冬をきらわず、足袋などはいていてするような、なまやさしいやりかたではゆるされなかった。働かないのは、一番目上で老齢である祖母と、幼いものたちだけだった。父も自分の床をあげてキチンとしまい、書斎の掃除まですることもあった。裁判所へ行く前に、多くの客が、二階へも階下《した》へも、離れへも、それぞれ他人に聴かせたくない用をもって来るので、母は一時二時に寝ても、朝は五時かおそくも六時前には起きていた。
 夏など、みんなが目ざめる前に、三味線の朝稽古をすまして来ようと、夜の白々《しらしら》あけに、縁の戸を一枚はずして庭へ出ると、青蚊帳のなかに、読みかけた本を、顔の上に半分伏せたまま眠っている母を見ると、母も本は読みたいのだなあと、たいへん気の毒な気がして、
前へ 次へ
全39ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング