風《すきまかぜ》が、おかっぱのまんなかにあけた、ちいさな中剃《なかず》りや、じじっ毛のある頸筋《くびすじ》に冷たくあたったので振りかえると、つくなんでいた男が、手のついた青い籠《かご》の上へ、手拭《てぬぐい》袋包をのせ、手拭と菓子籠の間へ、ヒラヒラと、巾《はば》一、二厘の、丈《たけ》五|卜《ぶ》ばかりの赤や青のピラピラのさがった楽屋簪《がくやかんざし》を十本ばかりはさんだのを、桟敷の中へ押入れるようにしていた。
と、おとなたちも気がついて、振返えると、また二、三寸板戸の開きがひろげられて、そこへ、他の男衆《おとこしゅう》を供につれた銀之助が来たのだった。あの黒い、眼の鋭い、お出額《でこ》の役者の子だとあとできいたのだが、この子は葱《ねぎ》のような青白さで、あんぽんたんが覚えているのは、薄青い若草色の羽織と、薄|柿《かき》色の着もので、羽織とおなじ色の下着を二枚重ねて着ていた。あたしが家《うち》へおくられて帰るときに、その青籠入のお菓子と、手拭と、楽屋かんざしをそっくりつけてよこしたので、家《うち》のものがいろいろその日の様子をきいたおり、その葱のような役者が、この贈りものをもってきた
前へ
次へ
全22ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング