みごうしゃ》、芝居ずきの集まった、権威ある連中の来た時など、祝儀をもらった出方《でかた》が、花道に並んでその連中に見物の礼を述べたり、手打《てうち》をしたりして賑わしかった。
この雛段を、下から、新高《しんだか》、高土間《たかどま》、桟敷《さじき》ととなえ、二階にあるのは二階|桟敷《さじき》、正面桟敷といった。そこにも緋のもうせんがかかっている。「助六《すけろく》」の狂言の時などは、この二階桟敷の頭の上と、下の桟敷の頭の上に、花のれんがさがり、提灯《ちょうちん》がつるされるので、劇場内は、ぐるりと一目《ひとめ》に、舞台の場面とおなじ調子をつくりだすので、見ている観客までがその場の、一場景につかわれる見物人にもなるので、浮立ってくる心理が、とても、こく[#「こく」に傍点]のある甘さとなって、演じる役者もみるものも、とうぜんと酔っぱらったのではないかと思うし、昔の芝居のおもしろさは、こんなところにあったのだなということが、今になって思われるのだった。
そうした桟敷の後の板戸を、そっと引き開けるものがあった。舞台に夢中になっている女たちは気がつかなかったが、ちいさな、あんぽんたんは、透間
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