た》やかに肥《ふと》っている。顔は艶《つや》やかだが赤黒く、体の肉は襞《ひだ》ごとつまみあげて、そこここを切りとれば、美事な肉片が出来ると思われるほどだった。だから、その面積もたいへんなもので、体を拭《ふ》くのに二人かかった。
 ともかく、二人の先触《さきぶ》れ小僧が、小川湯へつくと、他《ほか》に浴客《おきゃく》があろうがなかろうが、衣類《きもの》の脱《ぬ》ぎ場をパッパッと掃きはじめ、蓙《ござ》を敷く、よきところへ着物を脱ぐ入れものをおく。それから尻《しり》っぱしょりになって、流し場へ、お湯を酌《く》んだ桶《おけ》を積みあげ、ほどよく配置して、中央へその一党の場席を大きく陣取って待ちかまえるのだ。馴《な》らされた小者は、他への気|兼《がね》や、きまりのわるさなど、忘れてしまっているほど、おおかめさんが怖いのだ。口の中へ一ぱいに大福餅《だいふくもち》を押込まれたり、あの肥った体で踏んまたがれて、青坊主に剃《そ》りたてられるのが愁《こわ》いのだった。
 そうだっけ、小僧の一人、亀吉は剥身《むきみ》売りだったのだ。父親のない、深川ッ子の剥身売り[#「剥身売り」は底本では「剥売身り」]が、おお
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