議事堂炎上
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)行幸《みゆき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)上野|広小路《ひろこうじ》黒門町
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あらい[#「あらい」に傍点]のを
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明治廿二年二月の憲法発布の日はその夜明けまで雪が降った。上野の式場に行幸《みゆき》ある道筋は、掃《はき》清められてあったが、市中の泥濘《でいねい》は、田の中のようだった。
上野|広小路《ひろこうじ》黒門町のうなぎや大和田《おおわだ》は、祖母に金のことで助けられていたので、その日も私たち子供に、最大公式の鹵簿《ろぼ》を拝観させようと心配してくれた。
うなぎやの親方は、私の父に揚板《あげいた》の下の鰻《うなぎ》を見せて、あらい[#「あらい」に傍点]のを笊《ざる》にあげて裂いた。父は表二階で盃《さかずき》を重ねはじめた。今朝《けさ》から、というより昨日《きのう》から、芽出度《めでたい》芽出度といって、何かにつけてはお酒を飲んでいるので、あんぽんたんはそれをまた心配していた。
なぜなら、その目出た
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