わた》島田の上にかけているので、白木屋お駒という仇名《あだな》だった。山口屋――本問屋――のお駒ちゃんは八百屋お七――お駒ちゃんの妹の幸《こう》ちゃんは実にぱっちりした、若衆だちの顔つきだった。天野さんの――化粧品問屋――×さんはおとなしく、金物問屋のおぬひちゃん、袋物問屋のおよしさんその他の人たちも醜いのはなかった。
高い脚立《きゃたつ》をかついで駈《かけ》てきた点燈屋《てんとうや》さんも、立止ってにこついて眺めている。近所の人たちはいうまでもない、通行の人たちも立止っている。そんな時、おしょさんはどんなことを思っていたろうか、いつか、こんなことをはなしたことがあった。
「あたしは十五の時お母さんに叱られたことから、ふと死にたくなって、矢の倉|河岸《がし》(大川端)に死ににゆこうとしたら、町内の角に木戸口があった時分のことでね、急いでゆく前にぱたん[#「ぱたん」に傍点]と立ちふさがったものがあるので、怖々《こわごわ》顔をあげてみたらば、男の首くくりがぶらさがっててね、あっと思ったとたん死神がどこかへ飛んでしまって――」
「その時、おしょさん、どんな姿《なり》してた?」
何でも訊《
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