で有名だった。その頃の代言人(弁護士)は長髪の人が多かったが、高梨は白皙《はくせき》[#「白皙」は底本では「白晢」]美貌《びぼう》、長髪がよく似合った。
清水異之助さんは、秀造さんの妹を細君にして、横浜で外国商館の番頭と通弁をかねていた。この人は坂東しうか(今の中村吉右衛門のお父さん歌六の弟のしうかではない、もう一代前の有名な役者)と、品川の土蔵相模《どぞうさがみ》という妓楼の娘との仲に出来た子だという。
ある日、あんぽんたんの家の前に近所の人たちが立っていた。その人だかりの中には、日ごろは外《おもて》などへ出たこともない大問屋の内儀《ないぎ》たちも交っている。私はよそから帰って来て、なにごとだろうかと思った。それよりも小さな子供らしいことで、自分もみんなに交って、自分の家になにがあるのかと立って見ていた(見物の雰囲気がやわらかいものであったのが、子供にも安心させていたものであろう)。
そこにはピカピカした黒塗りの車があった。車夫は勢いのいい人たちで汗をふいていた。一人はさしびきの綱を肩からかけていた。
何が出てくるかな? と私も好奇心に待ちながめていると、横浜の清水さんが長
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