》ではあり、そこへこの新智識の才子が大事の娘の恋婿である。言うことに行なわれないことはない。吉原の改革はズバズバと行われた。その廓《さと》の権者《きれもの》が日影者になったのだから、吉原の動揺は一通りではなかったろう。ここで私に分らないのは、土地のためにならない事をしたのならば、土地のものがこぞって彼をかばうわけはないから、この税金費消事件には何か綾がありそうに思われる。後に金瓶大黒は娼妓《しょうぎ》も二、三人になり、しがなくなって止めたそうだが、浅草観世音仁王門わきの弁天山の弁天様の池を埋めたり、仲見世を造ったり、六区に大がかりな富士山の模型をつくったりした。公園事務所長は初代が福地桜痴《ふくちおうち》居士《こじ》、二代目が若い方の金兵衛さんだときいた。
秀造さんは蔵の二階にかくまわれたのだ。階下《した》は祖母の住居になって、さしかけへ赤ん坊の私と両親がいたわけだ。そんなところへよく逃げこんだものだが、隠密《おんみつ》がくると(隠密とはスパイ)、父はわざと蔵の階下へ通して話をするので他の者がハラハラしたという。この裁判は勝訴になったのだそうだ。そんなばかな話もあるまいが、私の老母《
前へ
次へ
全12ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング