大黒《きんぺいだいこく》の恋婿で、吉原に文明開化をもちこんで、幾分でも吉原を明るくしたかわりに養家はつぶしてしまった人。異之助さんは本邦最初の、外国火災保険詐欺をやった男。
秀造さんは眼から鼻へぬけるような才人だったという――これは後に大人が言ってるのを聞いていたのだが、吉原の積立金(税金だともきいた)使い込み事件で体があぶない時、父にかくまわれていた。
そのころ私は赤ん坊で、家は大火事に焼かれて土蔵前に庇《ひさし》かけをしていたというから、明治十三、四年のころでもあったろう。ある夜、神田柳原河岸の米屋、村勝という爺《じい》さんにつれられて、唐桟《とうざん》の絆纏《はんてん》を着て手拭《てぬぐい》の吉原かむり、枝豆や里芋の籠《かご》を包んだ小風呂敷を肩にむすんで、すっと這入《はい》って来たのが秀造さんだという。
金瓶大黒という名はよく講談にも出てくる。目下、『日日新聞』夕刊に載《の》っている田中貢太郎《たなかこうたろう》氏の「旋風時代」には金瓶大黒として、時の高官たちの遊興ぶりを書いてある。事実その遊びぶりは大《た》いしたものであったらしい。金瓶大黒の今紫の男舞といえば、明治もず
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