ふたり》の感謝だったのかも知れない。子供だけれど潔癖だからと、白い御飯を光るように炊《た》いてだした。お豆腐の上に、まっ青な、香《かおり》の高い紫蘇《しそ》の葉がきざんで乗せてあるのが私をよろこばせた。
「妙なものが好きだ。」
夫婦《ふたり》は私のお膳《ぜん》の前にいて、煽《あお》いでくれながらいった。
「お豆腐のきらいなのは知っているから、どうしたら好いかと心配したのだった。青いものが好きだから気に入るかと思って――」
木の枝にかけわたした竹|棹《ざお》に蔓《つる》がまきついて、唐茄子《とうなす》が二ツなっていた。
「朝顔につるべとられて――とかなんとかいうが、おやっちゃん、宅《うち》じゃあね、あれごらん、唐茄子に乾棹《ほしざお》とられてだよ。」
藤木さんは秀逸らしくいって、
「だけど、うん[#「うん」に傍点]と大きくして、油町へもってったって、こいつあ一個《ひとつ》でも、とてもあまるって、あの人数でもうな[#「うな」に傍点]らせるほど大きくするんだ。」
「桃の中から桃太郎が出るから、唐茄子から何が出るか、あたくしゃあ楽しみだよ。」
と湯川おばあさんがいった。
「違《ちげ》えね
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