勝川花菊の一生
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)長|茄子《なす》の
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)長|茄子《なす》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)にも[#「にも」に傍点]なんて
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勝川のおばさんという名がアンポンタンに記憶された。顔の印象は浅黒く、長かった。それが木魚の顔のおじいさんのたった一人の妹だときいても、別段心もひかれなかった。ただ平べったいチンチクリンのおじいさんに、長|茄子《なす》のような妹があるのかなと思った位だった。
しかし彼女は小意気だった、その時分の扮装《おつくり》が黒っぽかったので、背のたかい細面《ほそおもて》の女《ひと》を、感じから黒茄子にしてしまったが、五十を越しても水極《みずぎわ》だっていた。
幾年かすぎて、ふとその女《ひと》がはじめて来た日の言葉を思いだした。
「お滝さんにも久しぶりで逢《あ》えて――」
自分の姪《めい》の家へきて、にも[#「にも」に傍点]なんて変なことをいう――子供の心は単純で、かげりをもった言語《ことば》の深いあや
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