いい。熊とおじいさんと三人で住むんだ。」
そんな事を大人はいって笑った。
アンポンタンと湯川氏はポツンポツンと問答をはじめる。
「おじいさんの頭はどうしてこうデコボコになったの?」
「小笠原島で亀《かめ》の子の卵をあんまりたべたので、勢《せい》がついてデコボコになってしまった。」
「小笠原島の亀の子って、大きいの?」
アンポンタンは、背中に題目を彫られた大きな亀がつかまって、も一度海にはなされるとき、お酒をのませたのを覚えていて、その二尺五寸もある甲を思いうかべていた。
「そうだよ、大きな亀の子が揃って出て来て、浜の砂を掘って、ズラリと並べて卵を生んでゆくのだ。人間はそれを盗むのだからいけないな。」
「おじいさんも盗んだの?」
「そうだよ、盗んで幾個《いくつ》も食べた。」
「なんのために食べたの?」
「長生《ながいき》をするためにさ。」
「何故《なぜ》?」
「硫黄を――質《たち》のいい硫黄を製造して――硫黄の出る山はウンと見てあるのだけれど――お前のお父さんが承知さえしてくれれば……」
おじいさんは刀豆《なたまめ》煙管《キセル》をジュッと吸った。
「恐山《おそれざん》に熊が出る
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