たので、また兄貴が呶鳴《どな》った。翌日ゆくと、善兵衛おじいさんが股《また》の間へ摺鉢《すりばち》を入れて、赤っぽい大きなお団子《だんご》をゴロゴロやっているので、摺鉢をおさえてやりながら、なににするのだときくと、ただニヤニヤ笑っていたが、やがて、古新聞がお団子色にぬりたてられた。

 兄さんが死んで、おきねさんが三ツ輪に結って、浅黄がのこをかけてお歯黒をつけて、どこかみだらな顔つきになったが、それも見えなくなった。骸骨《がいこつ》の顔に大きな即効紙を張ったおばあさんも死んだ、善兵衛さんはどうしたのか、勝梅さんは天理教をやめて耶蘇《ヤソ》になったといった。外国婦人につれられて歩いているのを見かけたといったものもある。
 おやそさんに、も一人の姉さんがあった。やっぱり近所に住んでいたが、みんな後家《ごけ》さん――後家さんはお母《っか》さん一人で、あとは老嬢《おうるどみす》だったのかも知れないが、女ばかり四人《よったり》してキチンと住んでいた。母子《おやこ》なのだか姉妹なのだかアンポンタンにはわからないほど、梯子段《はしごだん》のようにだんだん年をとった四人だった。一番若い下の娘だけが廿二
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