れられないほど並んで、入口の三畳でふうちゃんが下ざらいをしているし、八畳の隅でなっちゃんが出来ない子に撥《ばち》をもってやって教えているし、おしょさんの前にはあとからあとからとおじぎをして出てゆくし、私は縁側で、千なりほおずきをとったり、石菖《せきしょう》に水をやったりして怒られたり褒《ほ》められたり、お手だまをとったり、みんなで鞠《まり》をかがったり、千代紙で畳んだ香箱へ、唄の出来ないところへ貼《は》りつける細かい紙を刻んだり、おちぢれをこしらえたり、お三宝だの菊皿だのと、時間なんて気にもしなかったのに――だが、古新聞はそれらにました悦《よろこ》びを与えた。あたしは善兵衛さんに手伝って、いつになく機嫌よく壁張りの手伝いや見物や助言をした。それは逆さまだ、こっちの面《ほう》へ糊《のり》をつけた方がよいのと。
古新聞が壁にはられてからあたしはせっせと稽古に通うようになった。番がきてもなかなか座らない。おまけにお弟子がすけないからいつも私の番がすぐにある。私は這入《はい》ってゆくにも足音を忍ばせて、こんちはも言わないで壁にゆく。勝梅さんは内職の毛糸の編物をしているが、勘のよい盲目《めくら
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