大丸呉服店
長谷川時雨

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)小伝馬町《こでんまちょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)吉原水道|尻《じり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから5字下げ]
−−

[#ここから5字下げ]
――老母のところから、次のような覚書をくれたので、「大丸」のことはもっと後にゆっくりと書くつもりだったが、折角の志ゆえそのまま記すことにした。
[#ここで字下げ終わり]

 小伝馬町《こでんまちょう》三丁目のうなぎやは(近三《きんさん》)明治廿四、五年ごろまであったと思います。
 大伝馬町四丁目(この一町だけ通《とおり》はたご町)大丸呉服店にては一月一日表戸を半分おろして、店を大広間として金屏風《きんびょうぶ》を立てまわし、元旦《がんたん》一日は凡《およ》そ(そのころで三百人以上)三、四百人の番頭、若者、小僧一同に大そうなごちそうが出る。お酒も出る。福引その他、実に一年中を一日に楽しませるので、近所の子供らも皆女中小僧をつれて遊びにゆき、羽根をつくやら、鞠《まり》なげ、楊弓《ようきゅ
次へ
全20ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング