う》もあり踊りもあれば、三味線もあり、いろいろと楽しませ夕方帰りには、山ほど土産をそれぞれにくれました。
大丸の符牒《ふちょう》
(イエトモヲコルコトナシ)
とか聞いておりました。
朝は早くから小僧が「おきろよおきろよ。」と呼んで、見世中《みせじゅう》十人ぐらいで、ぐるぐる起して廻りました。客がはいってくると、帳場の者が――帳場に
甚四郎[#「甚四郎」は枠囲い]とか
才助[#「才助」は枠囲い]とか大書した、三尺ばかりの紙札の下に、各自《めいめい》の横に、小さな帳場格子とかけ硯《すずり》をひかえて、ずっと並んで坐っています。客は名札を見て、気の合いそうな売手のところへと上ってゆきます。
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女客なれば、クノイチクノイチという
男客なれば、ハツコウハツコウという
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クノイチと言えば店中女客と思い、ハツコウといえば男客だと知ります。
不一[#「不一」に傍点]のクノイチは不器量な女の事
不一のハツコウは嫌な男の事
ト一のクノイチはよき女人のこと
ト一のハツコウはよき男のこと
客の買物の金高によって御馳走《ごちそう》がちがう。その
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